新しく創設された介護医療院

介護医療院は、介護療養型医療施設と医療療養病床の新たな受け皿として創設されたが、この背景には医療機関の病床数の多さ、医師や看護師等のスタッフ確保の難しさ、そして介護老人福祉施設におけるニーズの多様化が課題としてある。これらの課題に対応するために、長期的な医療と介護のニーズを持つ要介護の高齢者を対象として、日常的な医学的管理や看取り、ターミナル等の機能と、生活施設としての機能の両方を備えた施設として位置付けられている。

現存する介護療養病床と医療療養病床の多くは、介護医療院へ転換するとみられるが、転換に係る規制緩和や促進策がいくつかある。例えば、施設基準を緩和する特例措置として、1名あたりの療養室の床面積、廊下幅等が挙げられる。また、転換促進策の一環として重度認知症疾患療養体制加算や施設移行定着支援加算がある。前者は、施設入所者全員が認知症患者であって、精神保健福祉士や看護師などの人的配置が敷かれ、精神科病院との連携等をしている場合に加算する。後者は、サービスの変更内容を施設利用者とその家族、そして地域住民等へ説明する取組みがある場合に加算するものである。

一方、転換に伴い行政上の課題が残っている。介護保険制度における保険者は市町村であるが、個々の自治体では介護保険事業計画を3年毎に策定し、保険料の賦課額を決定している。保険料を算定する上で、高齢化率が高い地域や要介護認定者数が多い自治体では介護保険料が高くなることから、転換申請に消極的な市町村が出てきており、介護医療院への転換に係る地域偏在性への対策が求められる。